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山奥プロダクションについて


国立奥多摩美術館という企画から派生した。映像・彫刻・絵画・イラスト・漫画・写真・パフォーマンス・展覧会企画、等の美術作家が有する様々なクリエイティビティを社会に対し発信すべく発足したプロダクション。今回は、和田昌宏の映画『Songs For My Son』製作を行う支持母体となっている。

和田昌宏の映画製作に至る経緯


2016年夏、国立奥多摩美術館は、たぶんきっと日本初であろうDIYシネマコンプレックスを作った。これは、展覧会という形式の限られた会期中だけ出現したシネコンなのだが。そこで、多くのゲストをお招きして、「美術とは?映像とは?映画とは?」という問いに真正面から向き合った。そしてそんな中での会期終盤、それまで美術に軸足をおき映像作品を作ってきた和田昌宏が、「映画をつくる!」と宣言した。この時、和田の口から飛び出した「映画」という言葉について私は、映画が映画である所以は何処にあるのかを考えてきた。そこで思い至ったのが、「1人で作らない。1人で見ない。1人で完結しない。」という事だった。そもそも映画が発明された時、映像制作には莫大なコストが掛かり、とうてい1人で作れるような代物ではなかった。だから多くの人が関わり交わり協力し合い作られ、鑑賞された。それが映画である。和田の「映画をつくる!」という言葉は、1人で粛々と作品を作り続けてきた作家の「今回は1人では作らない、より多くの色々な人と交わり作品を作り、届ける。」という宣言なのだと私は思っている。今回、和田は今まで以上に多くの人と関わりながら、初めての映画作りに挑戦している。
(佐塚真啓)

今回の和田昌宏映画作りのきっかけとなった2016年の「国立奥多摩映画館」については、本になっています。映画監督をはじめ、各領域で映像制作発表を行う様々なゲストをお招きしてのトークイベントを収録。ぜひご覧ください。

国立奥多摩美術館について


国立奥多摩美術館は2012年、東京ギリギリの西端、『奥多摩』ではなく「青梅」にて発足。『国立』は「クニタチ」ではなく、「コクリツ」と読みます。が、日本国の国立ではない。では、なんなんだ?と問われれば、まず、国とは何か?について言葉を紡ぐ必要があるだろう。国とは漠然とした目に見えないモノではない。人間が集まった所に、それを束ねる概念として存在するモノと考える。等と、モゴモゴと、もっともらしい事を言ってみようと言葉を探してみても、正直なそもそもの始まりは、冗談の様な思いつきからでした。しかし、このようなちょっとした正論で吹き飛んでしまいそうな一瞬の思いつきを大切にする所から、あらゆる創造的な物事は生まれてくると、私たちは確信しています。
国立奥多摩美術館のこれまでの活動で一貫しているのは、『美術館』という呼称を用いながらも、展覧会や作品を通じて「美術とはなにか?」を鑑賞者へ問いかけ、ともに考えてみようと試みてきたことです。私たちは「美術」という土台にあらかじめ鑑賞者を登壇させなければ成立しないものや、イントロダクションとしての”暗黙の了解”や”前提”の上に言葉をむやみに積み上げること、共通教養としての沈黙、といったものではなく、鑑賞者との対話を求めています。それは「わからない」から対話が始まり、新たな可能性が生まれると信じているからです。もっと言えば、誰が決めたかもわからない美術の規則に従うよりも、自分たちが提示する作品や展覧会を通じて、それらが「作品かどうか」「美術かどうか」について多くの人と言葉を交わし、楽しめる状況を作ることの方が、より可能性を広げられるように感じています。「美術」を面白いモノにしていきたいと強く願っています。
(国立奥多摩美術館)